日本での経営改善コンセプトの活用 |
1998年10月5日の日経新聞に掲載された「ドラッカー氏に聞く企業経営」は日本の時流を 的確に捉えたインパクトのあるインタビューで、テレビなどでも評論家が取り上げていました。 | |
− 情報革命の流れはどう進むか | |
「情報革命の次のステップは、技術や機器、ソフトウエア、スピードの問題ではなく、
コンセプト(概念)の問題だ。これまでは情報の収集、貯蔵、伝達、分析、表現方法などが中心だったが、
これからは情報の意味や目的、狙いを考えることが重要になる」
「コンセプトを中心とした情報革命によって企業経営者の仕事は革命的に変わる。 経営者は情報を武器に企業がなすべきことを明確にするのだ。経営者が求めているのは、 より多くの情報やより早い情報でなくて、企業にとって価値のある情報だ」 |
ドラッカー氏の言うコンセプトとは、SCMやECR、QRなどで提案されている 経営改善コンセプトや、情報システムコンセプトであったり、すべての企業の共通業務である会計、人事、 総務などの業務コンセプトの実現であるERP(Enterprise Resources Planning)などでしょう。 米国で産まれ、発展してきたこれらの経営改善コンセプトや情報システムコンセプト、ソフトウェアが、 なぜ日本では米国ほど積極的に活用されないのでしょうか。 | |
それには、次のような理由が考えられます: | ||
・ | 経営者にとって情報システムは理解できない未知の領域(聖域)であり、 日本では横並びの情報システム導入以外の戦略は無かった | |
・ | 情報システム部門へは人材が投入されず、また専門職として人事交流も 活発でなかったため縁の下の力持ちにしかならず、横断的に業務を分析、企画する能力が育たなかった | |
・ | 米国と異なり、大手コンピュータメーカがユーザーのアプリケーション開発を全面的に 受託する方式が一般的であり、業務を理解しない開発者へのまるなげ委託となった | |
・ | ひところ一世を風靡したTQC(Total Quality Control)は日本の製造業の品質と生産性を大幅に向上させる ためのボトムアップからの企画・提案活動であったが、BPRのコンセプトである業務プロセスの全社横断的改革 という視点にはなり得なかった | |
・ | 業革の本家とも言われるイトーヨーカ堂でさえ、業革は店舗の責任者、売り場フロアーの責任者、 本社部門の担当責任者といったミドルクラスの組織個別の改善作業コンセプトでしかない | |
・ | これは日本の企業経営の問題で、米国では株主が強いので経営は短期に結果を出さなければならず、 長期的視野に立った経営をしていない、という見方が一時、日本で定着していた。しかし、 実際には2年の任期しかない日本の経営者の方が、問題が表面化していないビジネスプロセスの再構築など、 任期中にリスクを犯してやるよりも長期課題として先送りしていただけ。 | |
・ | 本当に株主に利益をリターンするには、BPR(*1)を積極的に企画、実施し、 企業体質を利益体質に改革するしかない。(*1:BPRはリストラを勧めていない) この経営方針と 具体策を株主に説明し、納得させれば経営陣は約束した時期まで赤字決算でも経営を続けることができ、 うまくいけば夢のようなボーナスも得られる。しょせん、決算重視の日本的サラリーマン経営者は、 ぬるま湯環境に浸かっているのでは? |
要するに、経営者の勉強不足、努力不足でしかないのです。 全社基幹業務のコンピュータ化(自動化、省力化、正確化など)が一段落すると、 情報システム部門は次に何をすべきかが提言できず、金食い虫として経営を圧迫し始めました。 バブル崩壊により景気が後退し、情報システム無用論が叫ばれ、情報システム投資は数年間に渡り極端に 縮小されました。この傾向は2年ほど前に終わり、今は2000年問題の解決による需要の拡大も併せて、 徐々にシステム投資も上向いてきましたが、まだ米国のような経営改善のためのシステム企画、 投資への気運は高まっていません。 | |